浦和レッズは優勝に向けて、他チームに比べて積極的に動いている。
なんといって、優勝に向けての「3年計画」最終年の昨シーズン、スタート奪取に失敗し、J1記録の7試合連続引き分けを含む9戦勝ちなしと勝ちきれない試合が続いたことで、優勝の希望を打ち砕いてしまい、結果的にシーズン9位と、今まで蓄積してきた計画の集大成が何とも言えない結果に終わってしまったからである。
そんな悔しい思いを味わったからこそ、今シーズンから新監督にマシエイ・スコルツァ氏を呼んだ。
スコルツァ氏は、ポーランド1部リーグを4度優勝に導くだけでなく、前シーズン11位に沈んだレフ・ポズナンを優勝に導くなど、低迷したチームを常勝軍団にまで押し上げる実績を残している監督である。
昨シーズン9位と悔しい結果に終わった浦和レッズを上位に押し上げるためにはもってこいの監督を呼び、何が何でも前年の悔しいシーズンは過ごすまいとチームに気合を入れるような監督人選をフロントは実行したのである。
そして、ACL決勝も見据えていたのか、ACLで日本人最多得点数を記録していて、浦和レッズで歴代最多得点記録を誇る現役でありながらレジェンドのFW興梠慎三をコンサドーレ札幌から呼び戻し、何としてもこだわりを持っているACLは最低限優勝するための動きをオフシーズンに見せてくれた。
それだけでなく、正確なキックからセットプレーでチャンスメイクするだけで無く、守備においても堅実にボール奪取するだけで無く、奪取した後もチームの頭脳と言わんばかりの展開力にてチームメイトを動かす司令塔の岩尾憲を期限付き移籍から完全移籍で獲得し、浦和に欠かせないピースを確保した。
更に、開幕後にはギニア代表で中国超級の滄州雄獅足球倶楽部からホセ・カンテを獲得し、キャスパー・ユンカーが抜けたゴールゲッターの穴も確保し、上位進出する戦力は十分に揃えて開幕を迎えた。
開幕こそ連敗をしたものの、その後は7戦負けなしと好調をキープし、第10節のサガン鳥栖戦では負けたものの、その後も10戦負けなしと、ズルズル行かず負けないサッカーを継続し続け、開幕から2節以降は、連敗を喫する事なくここまで第25節時点で4位と上位をキープし続けてきている。
強さの源は、何といっても粘り強い守備力であり、第25節終了時点でリーグ最小の19失点と最強であり、1試合平均0.76点という数字を残している。
この数字は2021シーズンに、2位と13ポイント差をつけて圧倒した川崎フロンターレの1試合平均失点数0.73(小数点第3位以下切り捨て)に匹敵する数字であり、今シーズンの浦和は守備だけでいうとリーグ優勝してもおかしく無い数字を残しているのである。
強固な守備の要因を、先月11日に主に守備面を担当しているヴォイテク・マコウスキ氏がオンライン会見にて話しており、キャンプからゾーンディフェンスを徹底しており、ボールの位置や味方の位置に気配りをして守るよう、開幕前のキャンプから浸透させていたのが、好調な守備を支えている要因である。
ヴィッセル神戸やFC東京、サンフレッチェ広島にJ2の町田ゼルビアなど、上位に位置するチームはハイプレスの守備を敷くチームが多くなっているが、浦和は疲れている時に体力回復のためにブロックを敷く事もあり、その際にもチームで約束事を決めてチーム全体で守っているとのこと。
そんな浦和をゴールマウスから支えている西川周作の存在はやはり大きく、セービング能力はもちろん、笑顔でチームメイトを鼓舞しみんなを盛り上げてくれるため、チームメイトは苦しい展開でも下を向くことなく、声を掛け合ってムード良く集中力高く守りを敷くことができる。
そして、アレクサンダー・ショルツは加入当初からセンターバックのレギュラーとして抜群の存在感を見せ、タフなディフェンスに加え、最終ラインからの安定したボール保持能力はミスが許されない最終ラインのプレーヤーにとっては、目立たないプレーであるが非常にチームの助けになっている。
なんといっても、ショルツはイエローカードをもらわない。
ディフェンダーは得点機会の阻止を理由にカードをもらいやすいポジションであるが、ショルツは第25節終了時点でイエローカード1枚しかもらっておらず、浦和レッズに加入してから累積警告で出場停止になったことが1試合たりとも無い。
そのため、試合に穴を開けることなく出場することができ、チームに安定感をもたらす役割を果たしているのである。
そして、右サイドは酒井宏樹という日本代表プレーヤーがいることで、プレーとしてだけでなく圧倒的な存在感でチームメイトの背中を引っ張ってくれている。
少なくとも、超越した走力と100%出しきりながら相手との競り合いに負けることがないフィジカルの強さから、右サイドからの攻撃をシャットダウンしてくれる。
ここまで紹介した守備のプレーヤーだけでなく、見ていてワクワクさせてくれるプレーヤーが攻撃陣にも多く存在する。
主に右サイドハーフで出場している大久保智昭は、低い重心から相手を惑わせるドリブルスキルであり、大久保にボールを持たせたら、ピッチ上の流れが変わるほどの力を持っており、次々に相手を交わしチャンスメイクをしてくれる。
だが、低重心でドリブルすることで下半身に負担がかかる上、スタミナ消費も激しくなるはずなのだが、90分攻守において走り切ることができるのがなぜなのか?と疑いたくなるほどの無尽蔵なスタミナを170cmという小柄な体の中に秘めている。
そして、安井海渡は本職がボランチであるにも関わらず、攻撃的ポジションでもゴールに直結する動きを見せることができ、ポジショニングの良さを攻守において生かすことができ、更にシュート力が非常に高くコースを狙ったシュートに玄人はもちろん、サッカーを初めて見る人にとっても凄さが伝わるほどのテクニックを誇る。
左サイドを持ち味のドリブルを生かしてチャンスメイク、ゴールでチームの勝利に導く関根貴大は、ドリブルを仕掛けるタイミングやフェイントが絶妙であり、それに併せていざという時のスピードも兼ね備えているため、真似ができないまさに唯一無二の魅力を誇っている。
だが、どの選手も毎試合得点を記録してくれるほどの期待を抱くのは難しく、常に得点の匂いをサポーターに与え、敵チームに恐怖を与えてくれるのは今シーズン加入したホセ・カンテである。
ある時には、中盤まで降りてパスワークに貢献すると共に、両サイドが攻めるスペース作りに尽力し、またある時には、西川のロングフィードの的としてラインを上げる効果を備え、そしてある時には持ち味のシュート力でフィニッシュを決めることができる、まさに浦和レッズに欠かせないプレーヤーである。
ご存知の通り、第25節終了時点で3試合連続ゴールを挙げており、どのゴールも常人ではできない美しく相手を絶望に陥れるゴールとして、Jリーグファンを騒がせており、私としては第25節の湘南ベルマーレ戦のゴールをぜひ見ていただきたい。
ワントラップからの振り向きざまにゴール墨を狙い澄ましたコントロールシュートは、チームメイトを喜ばせ、相手チームに絶望を与える、鮮やかすぎる技ありシュートで浦和レッズを勝利に導いてくれる。
これまで素敵なプレーヤーがいるのに加え、トルコのアンタルヤスポルから元日本代表の中島翔哉、バルセロナから安部裕葵を獲得し、ガチガチに優勝を狙いにきている。
連敗を喫しない安定感のある戦いに加え、崩れる予感のない守備の強さはまさに首位を脅かす戦いを見せているが、上位陣とはヴィッセル神戸・鹿島アントラーズ戦と後2試合しか残していない状況。
取り敢えず、ACL出場ラインの2位を最低限目指していきたいと思うのが通常であるが、ここまで良い戦いを見せている浦和レッズだからこそ、優勝を見てみたいものである。
ACL優勝に加え、また選手、監督に加え、コーチ陣、フロントらが顔中にシワを寄せるほどの笑顔でカップを掲げる姿を見てみたいものである。
「3年計画」通りには行かなかったが、1年遅れての優勝の姿を浦和サポーターに見せて欲しいものである。
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