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原翔太朗

「非Jリーグ経由」で海外挑戦をするメリットと向いている選手の特徴考察



 日本人選手がプロに入るにあたり、通例だとJリーグを経由して、活躍後に海外からオファーがかかり、海外挑戦に進む流れが主であった。


 だが、チェイス・アンリや中井卓大、福田師王などJリーグを経由せず直接海外へ挑戦というキャリアを選択する選手が増えてきている。


 かつて三浦知良が高校を中退しブラジルでプロデビューを果たし、Jリーグに逆輸入された際には希少的なキャリア選択からびっくりした方もいると思うが、海外に直接挑戦を決める選手が増えている中、もしかしたら今後は高卒・大卒から海外に挑戦する流れが基準となる可能性も考えられる


 でもなぜ、Jリーグというプロリーグが国内にあるにも関わらず、リスクともいえる海外挑戦をプロの最初として選ぶようになったのか考察していきたい。



 ・アンダー世代があるため、初年度から出場機会を確保しやすい

 海外のクラブではトップチームとは別で、アンダー世代のチームがあり、若い選手の出場機会を確保しやすい環境が備わっている。


 Jリーグだとトップチームしかないため、高卒・大卒初年度からプロで十何年活躍していた選手とも同じ線上での競争を強いられるため、1,2年目は有望な選手であってもベンチを温める機会が多くなり、試合でしか得られない経験を若い時に十二分に得られないデメリットがある。


 そしてアンダー世代が所属する下部リーグであっても、J2,J3に匹敵する、なんならそれ以上の観客動員を誇るため、多人数での環境でプレーする機会が若い時から得られることも良い点といえる。


 例えば、J2の2023年シーズン平均観客動員数は6.904人であるが、ドルトムントのアンダー世代中心の下部組織が所属するドイツ3部の2022-23年シーズン平均観客動員数は8,225人とJ2よりも多い。


 高卒・大卒後、J1のクラブに入団を果たしても出場機会が得られない若手選手は育成機関としJ2・J3と下部リーグへレンタル移籍をする選手も多く、同じ下部リーグであったとしても同世代のライバルに揉まれ且つ、より多くのサポーターに見られた環境でプレーを行うことは今後十何年とサッカー選手としてステップアップしていく中で、貴重な経験と言える。


 最初からトップチームでプレーできないかもしれないが、海外のアンダー世代でプレーするという選択肢が魅力的なポイントといえる要因として考えられる。



・人間的に強くなり、将来の選択肢を増やすことができる

 みなさんの周りを見渡して欲しい。


 大学卒業後はともかく、高校卒業後に海外へ就職するというキャリアプランを選択するクラスメイトが学校内で1人でもいるだろうか。


 つまり卒業後に海外で金を得て仕事をするという選択肢自体が、とても希少的である事がわかるだろう。


 また、異文化で自分をアピールするためにも、国内以上の発信力や自己主張が必要不可欠になるため、日本で過ごした同世代の選手以上に自分自身をアピールする力を得ることができる。


 そして、海外では日本にいては考えられないハプニングなどがつきものであり、そのような局面にも対応し、乗り越えていける人間はこの先の人生を生きていく中で非常に大きな財産になり得る。


 以前、能登選手にインタビューさせてもらった際に海外でのエピソードとして、「3ヶ月間給与が未払いで手元に50ユーロしか残らない時期がありました。」と語っていた。


 インタビューでは、当時お金がなくてペペロンチーノしか作れなかったため、『ペペロンチーノ時代』とユニークな表現で語っていたが、実際はなかなかタフな状況であったに違いない。


 クラブからも給料が払われないという裏切りを体感しながら、サッカー選手としてサポーターを喜ばすためにコンディションを作り、求められているプレーをピッチ上で表現するというのは想像できないしんどさがあったのではと外の人間からは想像できる。


 国内では考えられない経験を得られることが、例えネガティブな面でも自らを人間的に強くさせ、挑戦に積極的になったり、主体性を伸ばすことができるなど将来の選択肢を増やす要素を身につけることができる。



・反対に卒業後に海外へ挑戦するのに向かないプレーヤー

 だが、卒業後にJリーグを経由せずに海外へ挑戦するのに向かないプレーヤーも一定数いるわけであり、それは自らアクションを起こすことができないプレーヤーである。


 Jリーグではコーチや監督からアクションがあるため、それに向き合い従うことで自ら成長することができる。


 だが、海外では基本的に放任スタイルであり、自らコミュニケーションを取りにいかないと、アドバイスはおろか試合中にパスも来ないため、自分のプレーが満足にできない。


 そのため、トライ&エラーを繰り返すことができ無い上、監督・コーチ陣からチームの一員としてチームメイトや思われずに悪循環を辿る可能性も考えられる。


 だからこそ、異言語をプライベートの時間で学び、自らコミュニケーションを取りにいき、関係を深める・アドバイスを受けにいくという主体性がJリーグにいる時に比べて必要になってくる。


 そのようなことがストレスに感じてしまうプレーヤーであれば、卒業後にいきなり海外へ挑戦するのではなく、Jリーグでプロ選手として成熟した後に海外へ挑戦するのも一つの選択肢と言えると考えられる。



・現在の若手海外組の活躍

 それでも卒業後にJリーグを経由せずに海外へ挑戦することで花を咲かせたプレーヤーも多く存在している。


 非Jリーグ経由でないが、バイエルン・ミュンヘンII所属の福井太智は、高校3年の年にあたる18歳で現在も所属しているバイエルン・ミュンヘンへ完全移籍をし、アンダー世代で出場時間を重ねている。


 そこでのプレーが評価されて、2023年9月にDFBポカール!回戦で19歳ながら名門バイエルン・ミュンヘンのトップチームで途中出場を果たすという、今までの日本サッカーでは考えられないニュースを日本に届けてくれた。


 また、U-22日本代表の佐藤恵允も明治大学卒業後、ブレーメンに移籍を果たしU-23のチームで6試合2ゴールとわずかな出場機会ながらしっかりと結果を残し、2023年12月の第16節のライプツィヒ戦で、加入後わずか半年しか経っていないがトップチームのベンチ入りを果たした。




 そして、神村学園からボルシアMGへいきなり海外へ挑戦を果たし話題を呼んだ福田師王も、2023-24シーズンにおいて第19節終了時点で789分の出場時間を得ることができ、13試合出場しチーム2位の5ゴールという成績を残し順当にステップアップしている様子が見える。


 その他にも内野貴史はユースから昇格できなかった選手であったが、高校卒業後渡独し、ユースリーグ、4部と徐々にステップアップをし、現在ではアンダー世代の日本代表に選ばれるまでの成長を遂げ、今後の日本代表を支える選手としてもさらなる成長が期待される選手にまで成り上がって見せた。


 かつては、海外へいきなり挑戦をした選手も残念ながらあまり期待された成績を残すことができず日本に帰国することもあっただろうが、今の若い選手はそのような不安も感じさせないような成長と成績を残してくれている。


 今後、若い選手のキャリアパスにてJ,リーグ以外の選択肢を現実的にしていくため、若くして海外へ行くことを選んだ選手には成功例としての活躍を期待したいし、十何年後にはどこまでのスケールの選手になるのか楽しみで仕方ない。



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