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原翔太朗

昨年15位の町田ゼルビアが大躍進の要因~全国を代表するメガクラブに向けて~


 昨年のシーズンオフから、サイバーエージェント社長の藤田晋が代表取締役兼GMとなり、J1昇格に向けて手厚いバックアップを受けた町田ゼルビア。


 主要株主からの豊富な資金力をもとに、オフシーズンから大きく騒がせてくれた。

 新監督に昨年まで青森山田高校を指揮していた黒田剛氏が就任。



 一昨年から特別指定選手として活躍していた、山梨学院大学の平河悠だけでなく、カタールワールドカップで得点を決めた岡山のミッチェル・デューク、J1で2桁得点を記録した経験がある元横浜FMのエリキ、J1、J2とどのリーグにおいても活躍を見せる下田北斗を大分から獲得し、鳥栖よりドリブラー荒木駿太を獲得するなど、今までの町田とはべつちーむですか!?と疑ってしまうほどの大改革を行ったのである。


 それほど町田のJ1昇格に対する本気度が伝わった動きである。


 また、この頃はサイバーエージェントが事業として行っているAbema TVにて、カタールワールドカップを全戦無料放送を行うなど、サッカーに重点を置いている姿勢が見えている時であった。


 そこで1週間の視聴数を3000万回突破するなど、サッカーが国民にどれだけエンターテイメントとしての影響を及ぼすのかというのを数値で測れた節があるのかもしれない。

 そんな中、傘下にある町田ゼルビアがJ2だとどうしてもコアな人には届いても一般層にはどうしても届かない、そして収容人数や会場の規模もJ1と比較すると全く歯が立たないぐらいレベルが違う節がある。


 町田のホームスタジアムである町田GIONスタジアムは、2年前にJ1基準を満たす15,320人収容可能と最低限を満たしており、Abema TVでは「FC町田ゼルビアを作ろう~ゼルつく~」というクラブ応援番組を放送。


 MCに谷原章介を迎えて、町田を知らないお茶の間にメディアの力を通じ魅力を届けており、ここまでバックアップが整っていると、後は戦力を補強してJ1へ!!という流れになってもおかしくはない。



 だが、タレントは揃っているが、チームとしてまとまるのか心配していた節があったため、2,3年後に昇格かと私は予想していた。


 でも実際は、17節を終えて2位の東京ヴェルディに勝ち点7差をつけた首位とJ2では敵なしかと言えるほど圧倒的な成績と、立派な戦いぶりを見せてくれている。


 なぜここまで勝てるのかと私なりに考えていたが、固い守備やそれに伴う前からのプレスなど多くあると思うが、一番は黒田監督のチーム作りの巧みさになるのだろうと考えている。

 

 プロでの実績経験はないものの、青森山田高校を常勝軍団に導いたことから、勝ち方を知っている指揮官である。


 反対に、町田は優勝経験がなく勝ち方をわかっていないクラブであるため、まず勝利至上主義の考えをクラブに浸透させることから始めた。


 勝利のために何をするべきかと考えると、多くのメディアでも黒田監督は話しているように、「まず守ること」を手段として考え、町田の守備改革に努めていた。


 というのも、青森山田高校を勝てる軍団に導いた要因は圧倒的な守備力であり、第100回全国高校サッカー選手権も5戦2失点と圧倒的な守備を誇り、決勝で4-0とクリーンシートを達成し圧勝するという、長年にわたって守備を軸にして全国制覇に導いた実績がある。


 昨年15位と下位に甘んじり、リーグ50失点と決して悪すぎるわけでもないが、優勝した新潟がリーグ最少失点(35失点)と優勝チームは守備がしっかりしている印象がある。


 黒田監督は、チーム全体にインテンシティや切り替えの重要性を徹底的に注入し、ボールロストしても切り返して奪い返す姿勢や、ボールマンに対して2,3人と数的有利を作り激しくボールを奪い、中盤から攻撃を仕掛ける姿勢をよく垣間見る。


 第16節のレノファ山口戦で見せてくれた、前半39分に相手の最終ラインからセンターライン付近への縦パスに対し、池田樹雷斗がしっかりとケアをし、溢れたセカンドバールに対し、下田と稲葉修士がすぐにチャージに入り、中盤で強度を上げて守備を行ったシーンに、チームとしての強さを感じた。




 中盤で前を向かせると、池田がケアに入ってセンターライン付近にいるため、最終ラインが一枚少ない状態で攻撃を仕掛けられるリスクに加え、ペースを山口に持っていかれる危険性から、中盤で自由にさせず、守っているがペースはいつでも町田にあると言わんばかりの攻めのディフェンスがホームの観客やチーム全員を鼓舞してくれる。


 そういった一つ一つを抜け目なく集中力高めて選手がプレーするため、相手の集中力のほうが先に切れ、次第に攻撃力も低下し、結果としてクリーンシートを達成するという試合を今シーズンは良く見せてくれる。



 また、黒田監督は選手に対して特別意識を持たせるようなことはせず、町田の選手の中で一番と言える実績を国内で誇るエリキに対し、毎週10分程度の映像をもとにプレスの掛け方をレクチャーしている。


 結果として、エリキもチームにフィットしデュークとの安定した2トップの一角を担う活躍を見せており、黒田監督から指導されたプレスによって多くの得点チャンスを町田に与えてくれている。


 スーパースターがいたとしても、約束事をしっかりと決めてやり切るようにチーム体制を構築するあたりが、青森山田時代に現在U-20日本代表の主将として活躍しているMF松木玖生というスーパースターがいても、まとまったチーム体制により常勝軍団を築き上げた黒田監督の手腕であると私は考えている。(松木のキャプテンシーは日本人随一と言えるほどの力があるため、ただのスーパースターとは訳が違うところはあるが。)


 このような好調なチームに必要不可欠な、心臓部と言える"約束事"が組織内で浸透しているからこそ継続した勝利を得れることができ、その姿はサポーターにも伝わり、一過性のバブルではなく今後も勝利を届けてくれるのだろうと期待をしたくなる魅力が現在の町田にはある。


 その継続した積み重ねが功を結び、第17節の清水エスパルス戦で観客動員記録を塗りかえる10,444人と多くの人を惹きつけるチームへと成長している。


 守備をベースとした戦いから、ショートカウンターからの縦に早い攻撃プラス、高さを生かしたサイドからのポストプレイによりどの試合においても主導権を握り、魅力をどんどん高めていっている町田。


 町田市民だけでなく、東京、全国へと町田サポーターを拡大していくメガクラブになるほどの魅力と後ろ盾があるからこそ、5年後、10年後はどのようなクラブへなっているのか楽しみで仕方ない。



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