昨シーズン、アイントラハト・フランクフルトにて、16ゴール7アシストの大活躍を果たし、更にUEFAチャンピオンズリーグであのバルセロナを打ち破る結果を残したメンバーのトップスコアラーとして世界的に名前を轟かせた鎌田大地。
シーズン途中にて、契約更新をしない事を発表し、次の移籍先が注目された中、今月4日にセリエAのSSラツィオに所属する事が決まった。
当初は、ACミランへの移籍のためメディカルチェックまで行ったというニュースも流れたが、鎌田の獲得を狙っていたテクニカルディレクターのパオロ・マルディーニとスポーツディレクターのフレデリック・マッサーラの退任という名の事実上の解任が決まり、その影響から2つしかないEU圏外選手獲得枠にて、獲得の優先度が他の選手に比べて下がってしまうという問題が浮上。
結果的に、チェルシーからイングランド代表MFルベン・ロフタス=チークの補強により残り1枠となり、同じくチェルシーからアメリカ代表FWのクリスティアン・プリシッチの獲得により、鎌田の獲得は事実上消滅となったのである。
だが、新しいチームの候補として、アトレティコ・マドリードやレアル・ソシエダなど名門クラブや日本人とゆかりのあるクラブが候補として出てくることで、日本人ファンの夢は更に高まっていた次第であるが、チームの名前が出てくるだけで移籍が実現しない時間が長くなるほど、フラストレーションは溜まり、「鎌田のユニフォーム姿が見れるまでは信用しない」という声がSNS上で挙がるほど、徐々に鎌田への関心は薄まっていた
そんな中、日本人には馴染みが薄いかもしれないが、セリエA優勝2回、コッパ・イタリア優勝7回に加え、安定して上位に名前を連ねていて、昨シーズンはナポリに続いて2位とACミランよりも上位のチームからの獲得は鎌田の価値が十二分に認められた証拠であるだろう。
そんなラツィオは、昨シーズンは2位という成績を残してはいるが、優勝したSSCナポリに比べて、勝ち点差が16と優勝の期待すらもサポーターに抱かせることができなかったぐらいの独走優勝を許してしまったのである。
首位のナポリにどこで差がついたのかというと、得点数である。
失点数はナポリに対し-2点差とほとんど差はなかったものの、得点数はナポリの77点に対し、ラツィオは60点と16点も差がついているに加え、リーグでも6位と言う成績から埋めるべき課題は明白であろう。
更に、3シーズンぶりに欧州CLに挑戦をするため、リーグと共に戦い抜くためには戦力層を厚くすることは必須事項であった。
だが、2000年代初頭からストライカーとして活躍し、スパイクを脱いだ後もスポーツ・ディレクター(SD)としてラツィオを継続的に上位争いへと導くチームづくりに大きな貢献を果たしたイグリ・ターレ氏が今夏で退任というイレギュラーな出来事が起こってしまう。
それによる影響があったのか、有力な攻撃的な選手の獲得を積極的にできなかった上、2015年夏に加入をしてから長年ラツィオの主力として活躍し、昨シーズンも47試合に出場し11ゴール8アシストと貢献を果たしたセルビア代表MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチの放出が決定し、サウジアラビアのアル・ヒラルから4000万ユーロ(約62億円)の移籍金を獲得したものの、移籍市場への出遅れと共に主力MFの放出という欧州CLを挑戦するチームにとっては厳しいオフシーズンを過ごしていたのであった。
そんな中でレギュラークラスとして獲得されたのが鎌田であり、ワールドカップの経験やヨーロッパリーグでチームトップの得点数を挙げて優勝に貢献するといった大舞台での強さも期待でき、攻撃的ポジション以外にもシーズン後半戦はボランチを中心に出場するといったユーティリティー性も鎌田の価値を上げており、使い勝手の良さとラツィオにとって開いた中盤のポジションも任せられることから、ラツィオは鎌田の獲得を決めたのではないかと考えている。
鎌田には「次期ミリンコビッチ=サビッチ」として期待し獲得したのではないかと想定され、現に申し分ないプレーとスタッツを残している。
ディフェンスについては、191cmのフィジカルを活かした空中戦や対人戦の強さから多くの数値でミリンコビッチ=サビッチが上回っているが、例えばインターセプト数の1試合平均数が鎌田0.5-ミリンコビッチ=サビッチ0.8、タックルの1試合平均数が鎌田・ミリンコビッチ=サビッチ共に1.6、攻守含んだデュエル勝利パーセンテージが鎌田が44%に対し、ミリンコビッチ=サビッチは51%と微数でミリンコビッチ=サビッチが上回っているところが所々存在している。
だが、鎌田の持ち味はリスクを冒さず堅実なプレーを行うところであり、ポゼッションロスト数が鎌田は1試合平均9.9回に対し、ミリンコビッチ=サビッチは1試合平均18.8回とミスの数に大きな差が生じている。
堅実で堅守なプレースタイルのチームが多いセリエAで、且つラツィオは堅守が武器のチームであり、ボールを保持しパスを回しチャンスを伺う戦術であると、無駄なミスはなるべく避けていきたいため、「次期ミリンコビッチ=サビッチ」に収まらない活躍ができるスキルと中盤のプレーヤーとしてのポテンシャルを持っている。
ラツィオは鎌田に、テクニシャンの背番号10ルイス・アルベルトの逆サイドである右サイドでの活躍を期待されている。
ボランチとフォワードの中間の位置で積極的に攻撃に絡みながら、逆サイドや試合のバランスを見て守備での貢献も期待されており、決して簡単な役割ではないが、中盤のオールマイティーとして運動量豊富にピッチを縦横無尽に走り、且つボールに積極的に絡む活躍をチームは鎌田に臨んでいる。
現にそんなハードワークを昨シーズンはミリンコビッチ=サビッチが務めており、戦術家であるマウリツィオ・サッリ氏の求めるプレーはハードルが高く、特に守備においては求めるところが非常に厳しい。
シーズン前のラティーナとの親善試合の際に、チームメイトから守備時の立ち位置を指示を受ける姿があり、鎌田も「普段の戦術練習から色々な約束事があって、それをたくさん覚えないといけない」と語るなど、ラツィオでは非常に頭を使うため、体力だけでなく頭も疲れてくる。
そんな多くのタスクをプレーヤーはこなすことができたことで、リーグ2位という成績を残すことができ、そんなラツィオを鎌田は「試合に出る11人全員が上手い」と言わしめるほどの実力がラツィオには秘めている。
現に試合を見ていると、攻守においてポジションの入れ替えが発生するため、どのポジションにおいてもある程度のスキルが備わっていないといけない上、一瞬のずれも許されないため多くの選手が声を出し、指差しなどで指示を出し合っている。
サッカー単体のスキルもだが、チームの一員としてのプレーのクオリティーの高さからもラツィオの選手に上手さが備わっていると試合を見ていて感じる。
名門クラブに所属しても、出場機会を得ることができずベンチに埋もれてしまう日本人選手が多くいる中、鎌田はチームの中心選手の後釜として期待され、準備期間が短かった中で開幕戦からスタメンで出場し、パスワークや守備でのインターセプトなどでチームに順応している姿を見せてくれ、鎌田がベンチに退くまでは1-0の勝利の展開を演出することに一定の貢献を果たしてくれた。
イタリア紙も「イタリアでの戦いに慣れる必要があるが」という前置きを据えながら、「ボールキープ力の高さを見せてくれ、彼がピッチにいる時は相手に中盤を攻め込まれなかった」「交代してから逆転されるのは偶然ではなく、ドリブルやパス交換で中盤のダメージになった。間違いなくラツィオの重要選手になりうるであろう。」という高い評価を出している。
鎌田にとっても、せっかくフリーで移籍できるという権利を得たのだから、欧州CLにレギュラーとして挑戦できるステージがあり、非常に大きな分岐点を今シーズンは迎えており、鎌田も優勝を目指すクラブへの移籍が決まり、非常に多幸感に溢れているようである。
鎌田は、「ラツィオはサッリ監督になって1年目で5位になり、2年目の昨シーズンが2位でした。3年目の今シーズン、うちのチームは相当に期待されていますから。まずは、何かしらのタイトルを取れたらと思っていますよ」とインタビューで語っており、今シーズンを飛躍のシーズンにするべく、攻撃だけでない様々な方面でのレベルアップに向けて、ローマという街で今日も自分を高めていっている。
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