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  • 原翔太朗

カンボジア:内戦を経て、国民の夢と希望となっているサッカー



 今年1月初旬まで本田圭佑氏がCMを務め、湘南ベルマーレなどで活躍していた吉濱遼平選手や、元サッカー日本代表の高木琢也氏の息子である高木利弥選手などが所属していて、今年もFC琉球から牟田雄祐選手が移籍を発表し、日本サッカーと近い距離に属しているカンボシアのサッカー。


 長年の内戦に終止符を打った1991年のパリ協定から2年後の1993年に自衛隊によるPKO活動から、日本政府による多額な資金援助や、独裁体制を脱却するために総選挙実施に向けて金銭の援助に加え専門家の派遣、さらに時は遡り1966年に通称日本橋と伝えられているチョルイ・チョンバー橋をカンボジアに設計するなどカンボジアの和平、復興のため日本は協力を図ったことで関係性は良好な両国であるが、サッカーだけに絞るとどのような関係性にあるのか、そしてカンボジアでのサッカーの盛り上がりはどのようなのか見てみよう。



・カンボジアで圧倒的な人気を誇るサッカー

 カンボジアは隣国の東南アジア諸国と比較しても経済規模は小さく、本田がGMに就任した2018年当時では隣接国のタイとはGDP比で約20分の1、ベトナムとは約10分の1と世界的にも恵まれているとはいえない東南アジアの中でもさらに恵まれていない環境でいる。


 さらに、1970年からカンボジア内戦が起き91年のパリ平和協定締結まで続く長期的な内戦を経たからか、国民は疲弊し劣等感を抱いている国民が多かったとのこと。


 そんな中で、ワールドカップ4大会連続ゴールを挙げるなど世界的なスターである本田圭佑の存在はカンボジア内でとても大きく、国民から感謝されるほどであったとのこと。


 本田氏やCEOとしてプロリーグを立ち上げた斎藤聡氏の貢献から、今ではカンボジアでサッカーは国民的な人気を誇るスポーツとなり、少しずつではあるがレベルも上がってきている。


・カンボジアの歴史的背景~独裁政治に支配されていた市民たち~


 1863からフランスの植民地であり、1953年に完全独立を果たした。


 1970年まではジュネーブ会議で独立を勝ち取ったノロドム=シハヌーク首相により中国、ソ連、ベトナムなどと連携をとり王国を支配していたが、1970年に右派のロン=ノル将軍がクーデターを起こしシハヌーク首相を追放。


 そこから、一時北京に亡命したシハヌークが共産主義勢力や反米勢力の武力共闘により内戦が勃発。



 隣接国で起きていたベトナム戦争にて北の勝利が目前になった1975年にシハヌークと共闘していた共産主義勢力である武装組織クメール・ルージュにより、ポル・ポト政権が勃発し、住民を農村に強制移住させ食糧増産につとませたり、自動車など移動手段を所有することを禁じ徒歩での移動を強制させるなど、市民に対し様々な制限をかけていた。


 さらに自身の政策失敗をクーデターやスパイの仕業だと考えたポル・ポトは、猜疑心から市民の大量虐殺を総人口約800万人から13-29%となる104-232万人もの人数を虐殺したのである。


 行ったこととしては、医師や教師、公務員など知識人を主に強制収容所に強制連行し生きて出れたものはほんの一握りと言えるほどの過酷な労働や拷問を行ったのである。


 また、ベトナム戦争や内戦により地雷が多く仕込まれ、今現在でも地雷などの被害が起きているほどである。


 1991年のパリ協定により内戦は終結したが、市民にとっては振り返るのも苦しいほどの過酷な出来事がつい30年前まで起きていて、今現在でも混乱している政治や経済を立て直している段階である。


 そのような歴史的背景と現在の環境や生活から市民がネガティブな思考に駆られてもしょうがないと言えるだろう。


・カンボジアプロリーグの歴史

 カンボジアのサッカーリーグの歴史は、クメール・ルージュ体制が崩壊した1982年に始まっていて、カンボジアサッカー連盟を中心にカンボジアリーグが発足した。


 だが、テレビでプレミアリーグが観戦できる環境であるため、サッカーファンは選手のレベルや試合運営の公正さから国内リーグを観戦することには敬遠していた。


 国内サッカーファンからの人気のなさと、選手の給料も役のない警察官や若手教員がもらえる給料とさほど変わらないことから、怪我でキャリアが急に終わってしまう可能性のあるサッカー選手よりか大きなホテルで安定かつ高収入が見込める点から、職業としての魅力も欠けていたため、なかなかリーグのレベルを上げることができなかった。


 それは運営側にも見える課題であり、「単にチームが来て帰ってくる」の繰り返しで、プロと名乗るにはワクワクしないレベルで、エンターテイメントとしての価値を見出すことが困難なほどであった。


 だが、カンボジアサッカーリーグは日本サッカー協会と協力的な構築を行うことで、より魅力が増していくリーグへと進化していくのである。


 それは、これからの章にて斎藤聡氏の紹介の際にて詳しく紹介をする。


・カンボジアサッカーと日本サッカーの協力関係

 カンボジアと日本のサッカーにおける協力関係は非常に強固なものであり、カンボジアサッカーの盛り上げに日本は大いに貢献している。


 2008年からはJリーグで200試合以上を務めた唐木田徹がカンボジアサッカー協会の審判ダイレクターとして、国際的な水準での試合運営に尽力していた。


 そして2015年からブータンで代表監督を務めた経験がある小原一典が技術委員長を務め、全国25県の地方アカデミーの設立や、アンダー世代の代表チームの強化と未来を支えるプレイヤーの育成を6年前から取り組んでいたのである。




 さらに2019年からは清水エスパルスやFC岐阜のJリーグの監督を経験し、更に上記の小原氏と同じくブータンに加え、ネパールでも代表監督を務めた経験がある行徳浩二氏が派遣され、U-18の代表監督を務め、選手の育成だけでなく格上のタイやベトナムに代表史上初となる勝利を挙げ結果も示し、カンボジアのサッカーを大いに盛り上げる役割を果たしている。


 このように日本サッカー協会は代表の盛り上げに一役買っていることが大いにわかるであろう。


 だがこれだけではなく、前の章でお伝えした通りカンボジアリーグは決してプロのエンターテイメントとして語れるほどではなく、それを見事に昇華することが少しずつできているのはCEOに就任した斎藤聡氏の貢献があってのものである。


 斎藤氏はFCバルセロナの国際部を経て、日本サッカー協会(JFA)で日本とアジアのサッカー発展に関する役割を担い、2013年にはFIFAコンサルタントとしてインドネシア、タイ、カンボジアなどアジア諸国の担当に任命された。


 当時のカンボジアは、FIFAから競技場の人工芝敷設や夜間照明の設置といったハード面の支援は受けていたが、人口育成の支援は受けていなかったとのこと。


 そんな中、カンボジアサッカー協会のサオ・ソカ会長が斎藤氏へ語った「長年続いた内戦から国が復興する中で、サッカーを通じてルールや秩序を守る大切さを若者に伝えたい。」という言葉が印象的に残ったみたいであり、2021年10月14日にカンボジアにプロリーグを立ち上げ、初代のCEOに就任したのである。


 最初は現地メディアから批判もあったとのことだが、いざ始まるとメディアからの評価も上がり、今に至っても盛り上がりを維持し続けており、昨シーズンでは最も入った試合でも5000人以下だったのが、今シーズンは13,016人もの観客が集まり、今後もより盛り上がっていくのではないかと予想できる。


・カンボジアリーグの注目選手

 カンボジアリーグの注目選手として1人は日本から帰化してカンボジア国籍を取得し、今年カンボジア代表に選ばれた小川雄大を挙げたい。


 小川は山梨学院高校にて2年次からレギュラーを任され、3年次にはエースナンバーの10番を背負い総体にて優秀選手賞を受賞し、見事に活躍した姿を見せたことで注目を集め、FC岐阜の練習に参加し当時監督だったラモス瑠偉氏に高い評価を受けたことで、卒業後に同クラブへ入団。


 その後、岐阜では2年間で3試合しか出場できなかったが、2018年にカンボジアリーグへ移籍し10得点10アシストとダブルダブルを達成し存在感を見せた。


 それからはカンボジアリーグでプレーをし、昨シーズンはチームの2年連続でのリーグ戦、カップ戦、スーパーカップの3冠を達成に大きな貢献を果たし、自身はカンボジアリーグMVPに輝いたリーグ内で一番といっていいほどの活躍を見せている選手である。


 小川はボールタッチが正確なことからテクニックが非常に多彩であり、ノールックでのバックパスや痺れる展開での前線へのスルーパスは観客を魅了にさせる。


 さらにキックコントロールが的確であり、四隅を突くミドルシュートは群を抜いており、いやらしい場所へのシュートはゴールキーパーを泣かせるほどのスキルがある。


 そしてもう1人挙げるとすればケオ・ソクセラを挙げさせていただく。


 彼はカンボジア代表のゴールキーパーとしても活躍しており、大金星を上げたマレーシア戦やインドネシア戦でのパフォーマンスにも好評が集まり他国からの注目も集め、カンボジアリーグ内でも屈指の活躍を見せてくれている。


 長い手足と高い跳躍力からセーブを連発し、横への跳躍も抜群なことから、絶妙なコースへのシュートも止める姿を多く見せてくれている。


 そして選手ではないが、カンボジア代表がポゼッションサッカーを展開していることからリーグ戦でも主にパス崩しから点を奪うシーンが多く見られるため、パスワークやスペースを空けるためのオフザボールでの動き、戦術などにも注目してみていただくと非常に楽しく見れると思う。

 

 カンボジアリーグも右肩上がりに盛り上げを見せており、内戦という苦しい出来事を経験した国民にとっての夢と希望になってきているサッカー。


 今後もカンボジアでよりサッカーが盛り上がり、いつかは日本と共にカンボジアもワールドカップに出場などという物語が描かれるよう強く期待している。


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