昨シーズン、残留に向けて戦ってきたヴィッセル神戸がリーグ内で強さを見せてくれている。
かつて日本代表としてチームを支えていた大迫勇也や武藤雄樹、山口螢、酒井高徳に加え、現在バルセロナ監督であるシャビや、カタールワールドカップ優勝に導いたリオネル・メッシ、スペイン代表として無敵艦隊を率いたセルヒオ・ブスケツらと共に一時代を築いた名門バルセロナの中心選手であり、2010FIFAワールドカップでは優勝に導く決勝ゴールを決めた世界的プレーヤーアンドレス・イニエスタが所属と、誰もが羨む戦力でありながらチームは低迷し、J2降格も目の前の段階まで迫るなど非常に苦しい戦いを強いられていた。
だが、今シーズンは6節終了時点で、リーグ唯一の5勝をあげる勝点12で首位と好調を維持している。
戦いを見ていても、正直他のチームに大きく差はないが、実際試合終了すると神戸が圧勝している試合が多い印象を受ける。
ではなぜ神戸がここまで多くの勝利を上げることができているのかについて、私ならではの観点から振り返っていきたいと思う。
前線からのハイプレスから縦に早い攻撃
神戸は今シーズン吉田監督の元、堅守速攻からよりアグレッシブにアップデートし前線のスリートップが相手陣地でハイプレスをかけミスを誘ったり、パスコースを限定することでボールをインターセプトし、ショートカウンターを狙う戦術でここまで試合を支配している。
その中で特に活躍が目立つ選手は武藤嘉紀である。
第6節終了時点で4アシストとリーグ1位であるが、そのアシストを支えている一員として挙げられるのが、スプリント数の多さも関係するだろう。
第5節のサガン鳥栖戦では27回、第6節の京都サンガF.C戦では24回とチーム1位のスプリント数を誇り、平均として1試合20回以上のスプリントを誇っている。
前線からディフェンスにかけるプレッシャーは脅威的であり、武藤をはじめ大迫勇也、汰木康矢ら個としても強い前線が組織面に徹底して激しいプレッシャーをかけてくるため、1vs1に強く、ボールをとってからのカウンターも機能するという組み立てである。
前線からのハイプレスが機能したと感じる点が、第6節の京都サンガF.C戦の3点目である。
ディフェンス陣の処理ミスを見逃さず、スピードを上げて武藤が一番早くボールに追いつき、ディフェンス2人のマークを強靭なボディバランス能力の高さと脅威的な1vs1の強さから交わし、最後はフリーの大迫にパスをしゴールを記録するというシーンである。
ディフェンス陣も試合当初からハイプレスをかけられて疲労も溜まっていた上、京都にとっては2-0とビハインドの展開から集中力も切れていたのだろう。
チームで決めている約束事を試合通じて行ったことできたミスの誘発であり、抜群の個性がすでに備わっているタレント集団がチームとしてのまとまりをピッチ上でも演じてくれたなら、倒せるチームも数少ないであろう。
(参照 DAZN Japan)
中盤のボール奪取能力の高さ
前線からのハイプレスによりコースが限定されていることも関係しているが、中盤のボール奪取能力が極めて高く、安定した守備により中央で相手の自由を作らせていない点も勝因として挙げられる。
山口蛍は、第6節終了時点で1試合平均インターセプト数1.2回でリーグ1位と守備面で早速リーグ屈指の姿を見せてくれている。
また、新規加入の齊藤未月も早速チームに溶け込んでいる印象があり、中盤でボールをハントし中盤を引き締める活躍を見せてくれている。
もう一枚の中盤も井出遥也が頭角を表しており、攻撃の起点を作り出すパスセンスに定評があり、神戸の攻撃パターンにアクセントを加えてくれる。
中盤が相手を自由にさせないことが結果的に試合を支配することにつながり、結果として勝利という結果を導き出してくれている。
堅実な最終ライン
第6節終了時点でリーグ最小失点を誇る2失点と攻撃にタレントは勢揃いしていることは事実であるが、守備においても高い集中力を誇りミスを少なくしていることがリーグ首位という結果を生んでいるのであろう。
センターバックは、本来は菊池流帆とマテウス・トゥーレルと体格に優れているセンターバック戦人のプレイヤーで固めたかったところだが、両選手とも怪我で戦線離脱中であり、守備陣の選手層が乏しい状態である。
だが、代役としてベテランディフェンダー本多勇喜と、昨シーズンは右サイドバックでプレーしていた山川哲史が務めており、高いラインを保ちながら最終ラインの要として代役らしからぬクオリティ高い守備によりペナルティエリア内への進出を防いでくれる。
また、ペナルティエリア外であれば、第6節時点で100%のセービング率を誇るGK前川黛也の安定感もチームに安心感を与えてくれる。
そして、DF酒井高徳の攻撃での活躍だけでなく、対人守備での貢献も非常に高い。
サイドで裏に抜けたとしても、抜群のスピードで追いつきスライディングでボールを外に出しピンチを防いだり、タックルによる当たり負けも国内では勝てる選手も数少ないであろう。
今後は、世界トップのファンタジスタであるイニエスタがどのように戦術に浸透してくるのかが注目であり、戦い方にどのような変化を生み出すのか、それとも同じような戦い方を継続していくのか吉田監督の手腕にも注目がかかる。
ロシアワールドカップ組である、山口、大迫、武藤、酒井高徳らタレント勢のシーズン通してリーグ屈指の活躍を見せてくれることに期待したいし、リーグ優勝が定位置と言える戦力を保持しているため戦力をフルに生かす手腕を吉田監督に注目したい。
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